本ページではオープンバッジを発行する前提の知識として,オープンバッジの概要や仕組みについて,1EdTechで公開されている情報をもとにまとめています.
1EdTechではオープンバッジは以下のように説明されています.
Open Badges is the world's leading format for digital badges. Open Badges is not a specific product or platform, but a type of digital badge that is verifiable, portable, and packed with information about skills and achievements. Open Badges can be issued, earned, and managed by using a certified Open Badges platform.
Open Badgesはデジタルバッジの世界的な標準フォーマットです。Open Badgesは特定の製品やプラットフォームではなく、スキルや成果に関する情報が含まれた検証可能で持ち運び可能なデジタルバッジの一種です。認定されたOpen Badgesプラットフォームを使用することで、バッジの発行、取得、管理が可能です。
なお現在,オープンバッジの最新バージョンはver3.0であり,Ver2.0と並行での運用がされています.本ポータルではver2.0を前提として説明しますが,オープンバッジを発行・管理するプロダクトのver3.0への適応も始まっています.ver2.0とver3.0の違いとして,ver3.0はデータモデルがJSON-LDからVerifiable Credential(VC)という形式へ変更された点です.VCを利用することで,バッジの改ざんがより困難になり,多様なプラットフォームが利用できるようになりました.ver2.0およびver3.0の詳細については,以下を参照してください.
2024年11月の時点では,1EdTechに認定されたオープンバッジと関連するプロダクトは27個ほど存在し,1EdTechとCredential Engineの調査によると,これまでに約7500万個以上のオープンバッジが発行されています.オープンバッジのプロダクトは,以下の1EdTechがオープンバッジのエコシステムとして説明している図のように,オープンバッジの作成と発行,ホストと表示,検証する機能のすべて,もしくは一部を有しています.
なお,バッジの中身は,バッジクラス,アサーション,プロファイルを含んでいます.バッジクラスには,バッジの概要や取得基準が説明されています.一方,アサーションはバッジの授与情報を表現するJSONオブジェクトで,受賞者やバッジ,証拠などのプロパティを含みます.プロファイルは,オープンバッジを発行する組織や団体の情報を含み,発行者や受賞者の詳細を管理します.オープンバッジの内部構造については,以下の文献でも説明されていますので,ご参照ください.
なお,オープンバッジの発行サービスとして,1EdTechに認定されたものは以下で検索できます.画面左側のメニューでOpen Badgeを選択すると,一覧表示されます.
1EdTech | Product Certifications
本ページでは発行されたオープンバッジをどのように利活用すると良さそうか,先行研究等をもとに活用の視点としてまとめています.
先行研究におけるオープンバッジの利用シナリオ(本ページ下部に記載)を踏まえると,オープンバッジを活用するための視点は以下4つに再整理できると考えられます.
1. Badges as a motivator for behavior(行動の動機付けとしてのバッジ) 自身が獲得した知識・スキルを可視化するマイルストン・報酬としてのバッジ.
2. Badges as a pedagogical tool(教育ツールとしてのバッジ) 自身が現時点で何を勉強しなければならないのか,自身もしくは他者のラーニングパスを確認することで,スキルセットや学習順序等を理解できる.
3. Badges as signal or credential(シグナル/クレデンシャルとしてのバッジ) 学習者が対象となる知識・スキルを保有していることを証明するものとしてオープンバッジを利用する.
4.Badges as a community Support(コミュニティサポートとしてのバッジ) コミュニティ内でオープンバッジを保有している人物の可視化,他のユーザとのつながりを生成する.
上記は,Mozilla他(2012)が提唱した Open Badges for Lifelong Learning で言及されている利用シナリオと,Ahn他 (2014)のバッジに関する研究や理論的な文献のレビューを実施,文献を3つの利用目的に分類・整理した情報をもとに作成しています.Mozilla他(2012)とAhn 他(2014)の研究で言及されているオープンバッジの利用シナリオ・利用目的は共通項が多く,例えば,Mozilla他(2012)のラーニングパスの捕捉は,他者のバッジを見て必要なスキルや学ぶ順番を判断できることから,Ahn 他(2014)の教育ツールとしてのバッジで言及されているラーニングパスの視覚化という点と共通すると考えられます.
Mozilla Foundation, Peer 2 Peer University, & MacArthur Foundation, Open Badges for Lifelong Learning: Exploring an open badge ecosystem to support skill development and lifelong learning for real results such as jobs and advancement, https://wiki.mozilla.org/images/5/59/OpenBadges-Working-Paper_012312.pdf(2024年10月21日参照)
1.文脈を越えた学習の捕捉と変換
1.1.ラーニングパスの捕捉 学位や成績ではラーニングパスは抽象化される. バッジは特定のスキルや資質のセットを明示的に表現することができる.これにより,他者のバッジのセットを見て,学ぶべきスキルや学ぶ順番を判断することができる.
1.2.達成状況の発信 バッジはスキルや成果を仲間や外部の人に対して表すことができる. 採用担当者はバッジをもとに特定の要件を満たす人材を見つけることが可能となる.このように,バッジは従来の学位よりも詳細で多様なスキルを表現するものとして機能する.
2.学習への参加推奨および動機付けと学習成果
2.1.動機付け バッジは学習コースにおけるマイルストンや報酬として機能することで,継続的な参加を促す. バッジは、学習者にスキルやトピックを認識させ,新しいパスに着手,そのスキルを延ばすために多くの時間を費やすように促す.
2.2.イノベーションと柔軟性の支援 バッジは公式なチャネルでは見落とされがちなスキルの把握やデジタルリテラシーのような新しいスキルを捕捉するために利用できる.またイノベーションの出現に応じて,それを評価する柔軟性を持つ.
3.インフォーマルな興味に基づく学習の社会的側面のフォーマル化と高度化
3.1.アイデンティティおよび評価の構築 バッジは学習コミュニティ内でのアイデンティティ形成や評判向上を助ける.コミュニティ内で既に発生している可能性があるアイデンティティと評判の育成について,より明確なものとし,ポータビリティも高める.
3.2.コミュニティビルディング/親近感 バッジは,特定のコミュニティやサブコミュニティへの所属を示し,同じ興味を持つ仲間やメンターとの繋がりを促進する.
Ahn, J., Pellicone, A., & Butler, B, S., Open Badges for Education: What Are the Implications at the Intersection of Open systems and Badging?, Research in Learning Technology, vol.22, pp.1-13, 2014
1.Badges as a motivator for behavior (行動の動機付けとしてのバッジ)
バッジ使用の方法としてゲーミフィケーションがある.様々なオンラインコミュニティにおいて,バッジや他のインセンティブメカニズムはユーザの参加増加と関連している.
2.Badges as a pedagogical tool (教育ツールとしてのバッジ)
バッジが学習者に見えるシステムでは,バッジはコンテンツや学習のラーニングパスを視覚化する方法として役立つ.丁寧に構造化されたバッジのシーケンスは,ユーザに望ましい行動を伝える.適切に設計されたバッジは,学習者が計画を立て,進路を描くための道標となる.
3.Badges as signal or credential (シグナルもしくはクレデンシャルとしてのバッジ)
卒業証明書等の伝統的なクレデンシャルの代替または補完となる.潜在的な知識やスキルを他者に示し,他者はこれらの資格証明を用いて,その保有者について選別,評価などを実施する.
本章では,オープンバッジの仕組みと活用の視点についてまとめています。
オープンバッジの規格と1EdTechの認定プロダクトでは,デジタルバッジの世界標準規格であり,スキルや成果の情報を含む検証可能で持ち運び可能なデジタルバッジ形式であるオープンバッジの仕組みについて説明しています.
また,発行されたオープンバッジ活用の視点では,先行研究をもとに,オープンバッジを活用するための視点について,動機付けやクレデンシャルという視点からまとめています.