(1)OERの背景
Open Educational Resources(OER):無償で利用できる学習教材
現在、初等中等教育および高等教育を中心と して、教員等の教育者が自身の教育活動の中で生成した資料等を教育資源として無償で誰でも利用できる形で公開する取組が進められています.
これらの教育資源は Open Educational Resources(以下,OER) と呼ばれ,他の教育者による再利用や学習者が自身の学びを深めるために利用されます.このOERの種類は多様であり,授業の動画を撮影,公開するOpenCourseWare (以下,OCW)だけでなく,授業で利用したスライドや画像ファイルも含まれています.
現在,国内のOERは多様な方法で公開されて おり,OCWを独自で開発したプラットフ ォーム上で公開する各大学の取組や,2023年度版だけで13 万件以上ダウンロードされた京都大学学術情報リポジトリで公開されている プログラミング演習 Python 2023 のように,機関リポジトリ上でPDF形式の教材として登録・公開する取組等があります.
OERの一番のメリットは教材が再利用できるという点です.
たとえば,SPARC EuropeではOERを推進しており、OERのメリットとして以下のようにまとめています(以下のSPARC Europeで公開されているスライドから抜粋・意訳したもの)。
SPARC Europe: Open Educational Resource benefits
学習者にとってのメリット:
コース受講後も教材にアクセスすることができる。
OERはどこからでもいつでもアクセス可能なので、学習の多様化をサポートする
あらゆる年齢の人がアクセスできるので、新たな内容の学習や既に知っている内容のアップデートに利用できる。
教科書購入に関するコストを削減できる。
教員にとってのメリット:
教材作成の負担を軽減できる
OERを編集したり、組み合わせることで、各学習場面に沿った最適なコースの提供ができる。
高品質なOERを提供することで、評価される。
組織にとってのメリット:
公的資金によって開発されたOERは、公共の知識を創造するために使用され、少ない追加コストで複数の機関で共有することができる。
OERはオンラインで無料で利用でき、印刷や保存が可能で、更新も容易である。教科書を購入する代わりに、資金をテクノロジー、指導の改善、負債の削減に振り向けることができる。
国内のOERの推進はOCWが中心ですが,国外では多様なOERが集約・再利用されています.
本章では,国内のOERの普及状況,国外のOERに関する事例等を紹介し,OERに関する背景を説明します.
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